現在、将棋界の専らの話題といえば何と言っても「アマのプロ編入問題」ではないでしょうか。
事の発端はトップアマとして知られる瀬川晶司さんが『将棋世界』誌上でプロ入り熱望を表明したことでした。これを受けて、『週刊将棋』でも早速特集が組まれ、プロアマ賛否両論飛び交う問題へと発展しています。
以下、週刊将棋の内容と一部重複しますが、順を追ってこの問題を見ていきたいと思います。
ご存じの通り、瀬川さんといえば対プロ通算成績が16勝6敗と勝率7割を超え、昨年は銀河戦で現在A級棋士の久保利明八段を破るという快挙を成し遂げたプロキラーであります。尤も、瀬川さんの場合は純粋なアマチュアではなく、奨励会三段リーグに4年間在籍、その間に規定の成績を上げられず年齢制限により奨励会を退会、つまりプロ入りの一歩手前で挫折した所謂・準プロのような方です。
さて、ここで問題となってくるのがこの奨励会制度との兼ね合いです。プロ入り支持派の意見としてはそもそも年齢制限自体がナンセンスなのだという声が聞かれます。一度チャンスを逃したからといって、年齢でバッサリ切ってしまって再起への道は与えないという事は余りに閉鎖的ではないか、と問いかけます。
逆に反対派は、その制度の厳然たるルールの中で駄目だったのだから、今更特例を認めるのはいかがなものかと反論します。特に、今現実に奨励会でプロ入りを目指して戦っている奨励会員、更にやっとの思いでプロになったばかりの若手棋士からすれば、「それじゃあ俺達のやっていることは一体何なんだ」という気持ちになるのも無理はないでしょう。
そうは言っても、瀬川さんの実績は既に無視できないレベルまで来ています。そこで出てきたのが、再度三段リーグに編入してそこで一定成績を上げられたらフリークラス付けでプロ入りを認めようという折衷案。しかしこれとて、三段リーグ入りは即ち現在の職を捨てることを意味します。その間はもちろん無収入。晴れてプロ入り出来ればまだ救われるものの、もしそこで駄目だったらどうやって食っていくのか。
もう一つ、週刊将棋で挙がっていた第4の意見、それがプロテスト実施です。即ち、ある程度の実績を残したアマチュアに対して(対プロ公式戦対局数:15以上、勝率:6割5分以上辺りか?)、試験手合いを何局か実施し一定以上の成績を収めればフリークラス四段としての編入を認める、というもの。実は私自身はこれが一番妥当なのではと考えています。
これなら、プロテストを受けることの出来るアマチュア自体がかなり絞られますし(現時点では瀬川さん以外にいない)、奨励会員もある程度納得がいくのではないでしょうか? 何より、これだけ実績を残している瀬川さんが、「最強アマ」の肩書きを捨ててプロに殴り込む、こういう構図は見ているファンの側としてもワクワクしますし、プロ将棋界が少しでもオープンな姿勢を見せることがまたファンの裾野を広げ、ひいては普及にも繋がるのではないかと考えます。そして、プロ入りを頑なに拒むプロ棋士の先生方に一言申し添えるなら、「そんなに嫌ならば貴方達が負けなければよいのだ」ということになるでしょう。